副業でWebデザインを始めようと思ったとき、多くの人がまず引っかかる不安があります。それは「自分にはセンスがないから無理かもしれない」というものです。
僕自身、美大に通っていたわけでも、デザインを専門的に学んだわけでもありません。ちょっとしたきっかけからデザインを始め、今ではそれを仕事にしています。とはいえ、最初から自信を持って提案できていたわけではありません。独立直後は何度も痛い思いをしてきました。
今回は、僕が「センスではなく型が大事なんだ」と気づいた2つの実体験をお話しします。あわせて、育児をしながら働く今だからこそ見えてきた”精度”の重要性についても触れます。
「センスがある人」は、特別な才能を持っているわけではなかった
独立する前、ご一緒したデザイナーの方にこんなことを教えていただいたことがあります。
「デザインは設計だから、全てに意味を持たせないといけない」
この一言がきっかけで、僕は感覚でデザインを決めるのをやめました。その結果、言語化することを意識するようになりました。必要な知識は書籍やネットで一つずつ調べていきました。具体的には、配色が与える印象、デザインの基本構成、文字サイズのルールなどです。
「センスがある」ように見える人がやっているのは、感覚的なひらめきではありません。言語化できるルール、つまり「型」に沿った判断です。才能の有無ではなく、知識として後からでも身につけられるものだったんです。
Before:型がなかった頃、独立直後の失敗
とはいえ、型を身につける前は、何度もつまずきました。
独立してすぐの頃、あるクライアントから「カッコよく」「シンプルに」というご要望をいただいたことがあります。当時の僕は、その言葉をそのまま自分の解釈で受け止めました。そして「わかりました」と返事をして、デザイン案を作成しました。
ところが、いざ提出すると反応は芳しくありませんでした。僕が思う「カッコいい」と、クライアントが思う「カッコいい」の解釈が、大きくずれていたのです。その結果、ヒアリングをやり直すことになりました。納期が迫る中、かなりタイトなスケジュールでの作り直しになってしまいました。
このとき痛感したのは、問題は自分のセンスがなかったことではなく、認識のズレを事前に埋める工程を省いてしまったことだったという点です。

After:ヒアリングという”型”を身につけてからの変化
独立から3年ほど経った頃、ある飲食店を経営するクライアントからご依頼をいただきました。それは「デザインについてはわからないし、いい感じにお願い!」というものでした。
こちらとしては、お店のサービス内容や雰囲気を考慮しました。そして、文字だけのシンプルなデザインを提案しました。しかし、デザイン案を見た反応は「なんだか違うなぁ」という雰囲気。
そこで、今までに見たメニューで「いいな」と思ったものがあるか、あらためてヒアリングを行いました。すると見えてきたのは、そもそも売り出したいものが違っていたということです。具体的には、写真で視覚的に見せていきたいメニューがあること、人気だけど1日に提供できる数が限られているメニューがあることなどを教えていただきました。それを踏まえて、再度提案し直しました。
写真素材がなかった部分は僕の方で撮影させていただきました。限定メニューについては「人気で数量限定」という見せ方を工夫するなど、当初想定していなかった提案になりました。その結果、お客様にはとても喜んでいただけました。
同じ「抽象的な要望」でも、独立直後は自分の解釈だけで突っ走ってしまいました。しかしこの頃には、「本当に伝えたいことは何か」を掘り下げるヒアリングの型が、自然とできるようになっていたのだと思います。
育児をしながら気づいた、”数”より”精度”が問われる時期
この2つのエピソードは、どちらもまだ独身だった頃の話です。育児をしながら働く今、当時とは大きく違う制約を感じています。
独身の頃は、朝でも夜でも打ち合わせや作業ができました。何度もやり直しながら数をこなすことで、感覚をつかんでいくこともできたと思います。しかし今は、子どもの送迎や食事、寝かしつけなどがあります。そのため、動ける時間そのものが限られています。
だからこそ今は、1回の打ち合わせの精度を上げることが欠かせません。失敗を重ねて学ぶ余裕がある時期ではありません。1発で70点程度の提案に持っていく必要があります。だからこそ、以前にも増してイメージの共有を丁寧に行うようにしています。
時間がないパパ・ママ世代が副業を始めるなら、なおさら「型」を持っておくことが大切です。なぜなら、遠回りをしないための近道になるからです。
型の中身:説明できるデザインは、納得感を生む
具体的に僕が意識している型の一つが、「デザインの意図を言葉で説明すること」です。
以前、あるチラシのデザインを提案した際、ただ見せるだけでなく説明を添えました。具体的には、フォントや色味、視線誘導について一つひとつ説明しました。すると、クライアントも納得した様子で、そのままスムーズに納品まで進みました。
この説明をしなければ、前提条件がない状態でお互いに主観だけで話を進めてしまいます。その結果、余計な工数がかかることがあります。デザインを一目で圧倒するようなインパクトで押し切るのは、なかなか難しいものです。
食事に例えると、圧倒的に美味しい料理もあります。しかし、素材のこだわりや料理長のお話を聞くことで、より美味しく感じられることがありますよね。デザインもそれに近いものだと感じています。
他にも、フォントによる印象の違いや配色による印象の違いを説明しています。具体的には、「どんな印象にしたいか」「好きなフォントとお客様が持たれているイメージにズレがないか」といったところまで、一緒に話を深めるようにしています。

型は、日常の中でも育てられる
型を身につけるといっても、特別な訓練が必要なわけではありません。僕が今も続けているのは、いいなと思ったチラシやパンフレットを持ち帰ることです。具体的には、ネットで見つけたデザインをスクリーンショットで残しておくことも続けています。こうした小さな積み重ねが、自分の中の「引き出し」を増やしてくれます。
実際、型を身につける前と後とでは、デザインを1から作り直すことが圧倒的に減りました。仕事の回数を重ねるほど、その差ははっきりと出てきていると感じています。

まとめ:まずは基礎を教わり、数もこなしながら型を磨く
一番お伝えしたいことがあります。それは、副業Webデザインに必要なのはセンスではなく型だということです。僕自身、美大やデザイン専攻の経験があるわけではありません。
ただし、最初は誰かに基礎を教わるのが一番の近道だと思います。独学だけで手探りするより、体系立てて教えてもらう方が近道です。なぜなら、遠回りせずに型を身につけられるからです。
僕自身は独学と実務の中で少しずつ型を身につけてきました。今振り返ると、はじめから体系立てて学べる環境があれば、もっと早く遠回りせずに済んだかもしれません。オンラインで学べる環境も増えています。興味がある方は、こうした選択肢も検討してみてください。
そして、精度を上げようとするあまり何も提出できなければ、経験値は0のままです。ヒアリングを重ねたり、参考デザインを見たりしながら、まずは数をこなすことも、一定数は必要だと感じています。
時間の制約がある中でも、型を一つずつ積み重ねていけば、センスに頼らずともクライアントに満足してもらえるデザインは十分に作れるようになります。焦らず、一歩ずつ進めていきましょう。


